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私がフラメンコを始めたのは、会社の先輩から誘われたのがきっかけでした。
4歳の頃からピアノを習い始め、小学校ではブラスバンド、高校ではピアノ部、大学では学生オーケストラの団体で打楽器と音楽漬けの生活を送ってきた私にとって、フラメンコの独特なリズムと哀愁のある旋律はとても惹かれるものがありました。
ただ、「踊りの経験もない自分がフラメンコを踊れるようになるのか・・・」と半信半疑ながらも、スタジオに見学に行った週末には道具を買い揃え、翌週から週2回のペースでレッスンに参加していました。
それからの5年間はあっという間でした。ピアノを習っていた時の苦い経験から、基礎だけはきちんとやろうと心に決めていたので、サパテアード(足を打ち鳴らすこと)の練習は一番最初から手を抜かずにやっていました。同時に、ただ足を打つのではなく、いかにいい音で鳴らすか(=楽器本来の音を出す、というような感覚)ということも常に頭にありました。
基礎というのは大抵が単調でおもしろくなく、なるべく短く適当にすませてしまい、自分の好きな楽しいことばかりをやりたくなるものです。途中まではいいのですが、難易度が上がるにつれて立ち行かなくなり、結局一から戻ってやり直す破目になることを過去に経験していたので、自然とそういう思いにつながったのだと思います。(といっても、まだまだ出来ているというレベルには程遠いですが。。)
5年目の冬から上級クラスのレッスンにも参加させていただくこととなり、クラスのレベルが全然違うので最初は緊張の連続でした。
上級クラスに少しだけ慣れた頃、「La Vida Breve」という現代舞踊協会主催「5月の祭典」で踊った曲に出会いました。
オーケストラの曲に合わせて踊る、というのは私にとってはある意味特別なことで、改めて踊ることの楽しさを実感できた曲でした。
そう思ったのも束の間、一つ一つの体のポジションやブラソの軌道、サパテアードを時間通りに正確に打つこと、それらをやりながら必ずしも動きとは連動しないリズムのカスタネットをきちんと打ち続けること、などなどとにかく完全な状態が要求されるクラシコの難しさ、また「La Vida Breve」というドラマティックな曲に乗っていくことの大変さも痛感しました。
そしてこの曲で「5月の祭典」へ出演するお話をいただき、当初から相当厳しい道のりになることは覚悟していました。
発表会とは違い、自己満足で済まされるものではないので、まず一人一人がきちんと踊れることが要求され、お稽古も必然と厳しいものとなりました。
この2ヶ月間を通して、一人で一曲を完璧に踊り通すことの難しさ、また自主練習の過程で今の自分自身と正面から向き合うこと、いろいろなことを感じ、学ばさせていただいた貴重な経験となりました。
本番は今までのどの舞台よりも驚くほどあっという間に過ぎ去り、「こういう風に踊りたい」と思っていたことが何も出来ずに終わってしまった、という自分への敗北感でいっぱいでした。
「緊張した」というような精神的なこと以上に、もっと強い脚・身体でなければならないといった根本的な部分に弱さを感じたので、これからはこの部分を強化していこうと決意を新たにしました!
フラメンコを習い始めたときに、サパテアードは正にベースとなる打楽器であり、同時にバイオリンなどの主旋律をブラソ(腕)や体全体で表現することが出来る、そんないろいろなパートを兼ね備えている「フラメンコ」という踊りにとても感銘を受けました。
この時の気持ちを忘れずに、またフラメンコ以外の芸術からもいい影響を受け、より美しく、より力強く表現することにつながれば!と思い、これからも自分自身を磨いていきたいと思います。
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